« 幕間 | メイン | ねぇ、なっくん。 »

DINNER or BATH?

高校時代に書いたものです。
メイド喫茶がこんなにポピュラーになる前の時代(笑)。

此処から―――――――――――――――――――――――――

佃健作(つくだ けんさく)、27歳サラリーマン。私立経済大学を卒業し、就職。2年前に3歳年下の優佳(ゆうか)と結婚。幸せな日々を送っている。
しかし、そんな彼には人には言えない悩みがあったのだ。

「ただいまぁ」
いつものように健作はインターフォンを鳴らす。
「お帰りなさい、健ちゃん」
可愛らしいエプロンをつけた愛妻、優佳(ゆうか)がぱたぱたと走ってきて玄関を開ける。
「ご飯にする?それともお風呂が先?」
可愛らしいエプロン姿の妻は、これまた可愛らしく小首をかしげて尋ねた。
「んー、風呂を先にしてくれ」
健作が答えると「はーい」と返事をして優佳は風呂場へと向かう。
「可愛いなぁ」
思わず健作はひとりごちたが、その後に続けた。
「今日こそは言わなきゃ」

「なぁ、優佳」
風呂の支度を終え、夫のスウェットを用意している妻に向かって健作は言った。
「なぁに?」
「何でも、俺に聞いてから決める必要なんてないんだぞ」
「え…?」
健作の言葉に優佳は戸惑いを隠せない。
「何でも俺に聞いてから決める必要なんてないんだぞ。倖のことは全部お前に任せるから」
「ごめんなさい。私、健ちゃんに迷惑かけちゃいけないと思って・・・」
泣き出しそうな顔の優佳は半分も言わないうちに泣き出してしまい、狼狽する健作の足元で倖(さち)が一声、
「わん」
と鳴いた。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://color-chips.xsrv.jp/mt5/mt-tb.cgi/1026

コメントを投稿