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邂逅

何年ぶりかに実家へ帰ってきた。
深い意味はなく、母校を訪ねた。
1日目は小学校。
2日目は中学校
3日目は高校。
時が流れた分、それらは変化し、確かに年をとっていた。

電車とバスを乗り継ぎたどり着いた大学は、記憶と寸分たがわぬ様に見えた。
ここを去ってからもう8年。
それでも、まったく変わっていない気がした。
校舎の裏の小路を歩く。
木漏れ日の下、人影が見えた。
あの人は今どうしているのだろう。
あの人が去って、風の頼りも途絶え、今どうしているのだろう。
私は誰にも尋ねなかった。
あの人無しで生きることを選んだ。
あの時、あの人にすがっていたら、今頃私はどうなっていただろう。
今より幸せになっていたとは思わない。
私は確かに、常に最善の選択をしてきたのだから。
人影が動き、こちらを向いた。
「久しぶり」
と、彼が言った気がした。
「こんにちは、ここの学生さん?」
「そうですけど…?」
学生はいぶかしげな顔をした。
「ママン、ちゅかれたれす」
ぐずりだした娘を抱き上げて、私は言った。
「私は、ここのOGなの。中退したんだけどね。貴方を見てたら、なんだか懐かしくなっちゃって」

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コメント

 母校の中学校に行って、真っ先に思い出したのは牛乳雑巾の匂い。もうしょうがないよねw

 大学だと一カ所だけ通りたくない道があるんだなー。そこを通るとその時感じていた恐怖が「ドーン」と迫ってくる。
 これだけは何年経っても牛乳雑巾のようにこびりついてるのかねぇ。
 やだやだ

 とそんな事をぼやーっと考えながら読んだ金曜日の真昼。(作者の意図なんてしったこっちゃねぇーw)

卒業生と在校生の運命の出会い!?
どきどきw

あいかわらず素敵な文章でいつも引き込まれてしまいます。。

卒業してからしばらく母校に行ってないなぁ。。大学以外はw
懐かしい思い出が(しんみり)。
大学は。。卒業しても毎日行ってます(汗)

>みむらーさま
いつもコメントありがとうございます。
そして、例の如く内容に関係ないですねw
次は豆腐作りたいですw

>まささま
『俺はあの頃、まだ21歳だった。そして、年上(子持ち)の女性に恋をした。』
とは続きませんw

いまひとつ分かりにくいのでそのうち書き直します(汗)。

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