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ある空の下 ver.1

2月中にといっていたのを思い出しました(汗)。
駄文で恥ずかしいですが一応公開。
3部作です。

此処から―――――――――――――――――――――――――
フミカ

あたしの前にはカフェオレの入った背の高い、彼の前にはコーラの入った丸っこいグラスが置いてある。他愛のない話を当たり前のようにしているあたしと彼は、さも恋人同士のように見えるだろう。
 現実は友達の紹介で1ヶ月前からメールをしていた。実際にあったのは今日がまだ2回目。ゆくゆくは“彼氏・彼女”になるかもしれない、その程度の付き合いだ。
「でさ」
あまりにも唐突に彼が切り出したので初め、何のことかわからなかった。
「君のこと、友達としてしか見えないんだよね」
 ナンデスト?
 君のことがあたしの事で、友達というのは彼氏・彼女の関係にならないという意味だと気がついたのは1分半後。
「こないだ映画、誘ってくれたの君じゃん!それに、メールだっていつもそっちから送ってきて…」
 そう言ってやれたらどんなに楽かと思ったけれど,あたしにも気が無いのは事実だと思い直して黙った。
「そう。じゃあこれっきりなんだ」バッグを開け、財布から取り出した500円玉を伝票の上に置く。そうとなったら話は早い。あたしはテーブルから離れる。
彼が何かを言いながら追いかけて来たが気にしないことにした。ここで振り向くのはあたしのプライドが許さない。
「ねえ、待ってってば」彼があたしの腕を掴んだ。
 痛い。それでようやく振り向いたあたしに向かって彼はしゃあしゃあと言った。
「誰か友達紹介してよ。付き合える子」
 大学生くらいの女の子が2人連れで店に入ってきた。
 バイトのウェイタが銀のお盆にグラスを2つ載せて、席へと案内している。
 
 その後、自分が何をしたのかよく分からない。ガラスのドアに半ば体当たりをするような形で店を飛び出し、気づいたら公園にいた。
「あー、苦しい」体力測定ですら真面目に走らないあたしだ。肩で息をしているのが自分でも分かる。
「あ…」彼は男の子にしては背が低かった。あたしと大して変わらない。だから差を広げないように、ヒールの高いミュールじゃなくて底の薄いスニーカを履いてきた。走ることをなんとなくでも予想していたように。
 日焼けしちゃう。右手をかざして見上げた空が、なんとなく滲んで見えるような気がした。どうしてかしら。
理由を知ることはあたしのプライドが許さない。

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