ある空の下 ver.2
第2弾です。
恥ずかしくなってきたw
此処から―――――――――――――――――――――――――
ユミ
とてもゆっくりとしか歩くことのできない、きっと運動神経が悪かったせいだろう、そんなわたしの横を、同じようにゆっくりと彼は歩いている。
左足、右足で一段。また左足、右足でもう一段。そうやってわたしは階段を下りる。右足、左足、と二段。そうやって階段を下りては彼は立ち止まる。
「遅いでしょう」自嘲するようにわたしが言う。こんなわたしの横を歩きたいと言うのはきっと、物好きなこの人ぐらいだろう。後にも先にも。
男の子と、こんな風に並んで歩くのは初めての経験だった。彼にしても、きっとそうだろう。でもさっきから二人ともほとんど口を利いていない。そんなこと、理由は明白だった。
「後どれくらい?」
「一ヶ月くらいかな」
口数が少ないのは緊張しているからなんかじゃない。わたしたちはこの階段を下りたら別れるのだ。
何をするわけでもない付き合い。すごく短い間だった。
「ごめんね」わたしは言った。「やっぱり無理だよ」
彼に対して何の感情も持っていない。それが本音だった。何でOKしたのか自分でも分からない。でも、彼が本気であることを理解すればするほど辛くなった。
だからこんなことになったんだろう。彼はわたしを忘れてくれるだろうか。わたしは彼を傷つけた。ひどいことをしたと思う。
通りかかった陸上部の女の子たちが、少し距離をとりながらも一緒に階段を下りているわたしたちを見上げている。彼女たちの目にわたしたちはどんな風に映るのだろう。
昇降口を出てもわたしたちは同じように、ずっとそのままの距離を保ったまま、歩いた。ずっと遠くに彼の友達が見えたとき、じゃあ、と彼が手を上げた。
それじゃあ、とわたしも答える。彼が背中を向ける。
「ねえ」
彼が振り返る。
「またいつか」いつか何なのだろう。「機会があったら」どうするのだろう。
右手を上げて答え、彼は私の許を離れていった。
ごめんね。彼の背中に向かってわたしはつぶやく。ほんの少しでも彼氏・彼女の関係にあった彼の背中に。