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信頼問題

生まれて初めて、恋人と呼べる存在が、できた。
後輩の友達で、ひょんなことから縁ができ、付き合うことになった。

後輩は俺に言った。
まるで保護者のような口調で。
小指にはめたリングを回しながら。

「あたしは、先輩のことを信頼してるから、彼女との仲を取り持ったんです。彼女を悲しませるなとは言いません。此処で、先輩が彼女と付き合うかどうかは、先輩自身が決めることです。断れば彼女は悲しむでしょう。でもそれは、仕方のないことです」

そして、リングを回す手を止め、上目遣いに俺を見ながら続けた。

「けれど、彼女を傷つけることはしないでください。悲しませることと、傷つけることは違います。これ以上、彼女が傷つくようなことにはなってほしくない。彼女があたしみたいにならないように。それだけは、よろしくお願いしますね」

それだけ言うと、彼女はぱたぱたと走り去っていった。
俺には女心と言うのは、よく分からない。
けれども、彼女に言われたことだけは肝に銘じておこうと思う。

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