June 2011

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受話器の向こうで。

最近、ときどき家の電話が鳴る。
壊れてないから当たり前かもしれない。
けれど、携帯ではなく家の電話にかけてくる人は、珍しい。

相手は、いつも同じ人。
分からないけど。
いつもオオイシと名乗る。

「もしもし、オオイシですけど。ヨシノさんいますか?」

ヨシノは私の名前。
でも、私にはオオイシなんて知り合いはいない。

電話は、決まって平日の夜。
私がバイトに行っている時間帯にかかってくる。
だから母が、バイトから帰った私に電話があったことを伝える。

あまりに普通に名乗るので、昔の同級生か何かだと、母は最初勘違いしていた。
でも、小中高、どこを探しても、オオイシなんて男、知り合いにいない。
中学の時、そんな苗字のクラスメイトがいた。
でも、女性だ。

一度だけ、その電話を自分で受けたことがある。

「もしもし、オオイシですけど。ヨシノさんいますか?」
「ヨシノは私ですが。どなた?」
「は?ヨシノさんお願いします」
「ですから、ヨシノは私です」
「何がですか?ヨシノさんを出してください」
「ですから、ヨシノは私…」
「何言ってるんですか?本人を出してください」
「・・・」
「ヨシノさんとちょっと話がしたいんです」
「どのようなご用件ですか?」
「本人を・・・」
「どちらのオオイシさん?」
「だからヨシノさんを・・・」

彼はヨシノを出せと言い続けた。

私がヨシノだと何度言っても聞かず、本人を出せ、ヨシノはそんな声じゃなかったと言い、終いにはヨシノと話せないなら切ると言って電話を切った。

以後、ときどき電話はかかってくるが、私は一度も受けていない。

皆は、私をヨシノと呼ぶ。
そうだ。私はヨシノだ。

彼はなぜ、私をヨシノだと認めてくれないのだろう。
彼は何を、ヨシノに伝えたいのだろう。

昼間、私が家にいない間に、彼は電話越しにヨシノと話をしたのだろうか。
彼にとってヨシノはどんな存在なんだろうか。
私はヨシノだけど、分からない。

comments

僕はよく名前を間違えられます(汗
勧誘の電話とかでもw
僕はほとんどそういう電話に出たこと無いんだけど。。

「そんなヒトうちにはいません」
うちの家族は決まってこう言います。
間違えてるだけなんだろうなってわかってるのにw

comments

勧誘の電話には有効策ですなw
しかし、赤の他人に自分を否定されるとは。。。

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