Jul 7 , 2008
不完全あいろにぃ
short short story
『しばらく旅に出ます。
3ヶ月以内には連絡します。』
そう書き置きして、僕の姉は失踪した。
半月前、高校生のときから付き合ってきた恋人と別れた。特別、何か理由があったわけではないけれど。ただ、なんとなく日常を変えてみたくなったのだ。
そしたら、とてもびっくりした。
彼がいなくなった私の世界は、とてつもなく狭く、変化に乏しいものだった。
いつの間にか、世界のすべては、彼のものになっていたのだ。
私はその事実に驚愕し、打ちのめされ、そして、旅に出ることにした。
守られている日常に嫌気がさして、新しい何かを見てみたくなったから。
だから、かばん１つに入るだけの荷物を詰めて家を出た。
弟には、一応、手紙を残してきた。
探すなとは書かなかったけれど、捜索願を出すようなことはしないだろう。
そう信じておく。
さあ、次の列車に乗ろう。日常を置き去りにして。
つづくかも。
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