June 2011

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海月

頭の中かで声がする。
「殺せ」
ずっと、ずっと、声がする。
「殺せ殺せ殺せ」
途切れることなく、ずっと。

目が覚めると、天井が見えた。
まだ声が聞こえる気がする。手でぬぐうと泣いていることに気がついた。
半身を起こしてスイッチを切り替える。
感情は、必要ない。
生きていくうえで必要ない。
枷にしかならない。
だから、感情を殺す。
おそらく私は、人間に向いていないんだろう。
あるいは、生きていくことそのものに向いていない。
どちらにしても同じことだ。結果に変化があるわけじゃない。

欠陥品

自分のことを表現するのにここまで適当な言葉もないと思う。
ここまでくると、欠陥品も芸術だと思えてくるから不思議だ。

「くらげになりたい」

なんとなく、口をついて出た言葉がこれだ。
壁に目をやると、何もいない水槽が目に入る。
3ヶ月前まではくらげがいた。
けれども、くらげは死んでしまった。
死んだくらげは、水に溶けてなくなってしまった。
だから、水槽の中には、何もいない。
何もいない水槽の中で、水だけが循環している。

「さみしいな」

いつだったか、くらげの話をきいた誰かがつぶやいた。
もう少し、人間を続けてみよう。

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