画像処理屋によるデジカメTips03(被写界深度ってなんだ?)

camera_20120521.jpgのサムネール画像

 はやし@color_chipsです。
カメラを使っていてよく聞く単語があります。『被写界深度(ひしゃかいしんど)』
 なんとなくわかっているけれど、なんだかわかりにくい言葉なので、「ああ、被写界深度ね。うんうん。わかるよ。」みたいにスルーされがちなキーワードです。
 仕組みを知っているとイメージ出来て、撮影の手助けになると思いますのでここでおさらいです。

2014/9/8修正:レンズの焦点距離と被写界深度の関係が逆に記載されていました。

被写界深度=ピントの合う範囲?

 写真を撮っているとよく、「ボケる」ことがあります。うまくピントが合っていない状態ですね。
 じゃあ、ピントがあっているってどんな状態なのかわかりますか?
 改めて言われてみると、わかるような、わからないような。。

ピントが合う距離と範囲の話

 写真では、ピントが合っている?ずれている?は最終的にはヒトが判断しますね。
 なので、『ピントが合っている』というのは、「ここだ!」とはっきりとは決まらず、「だいたいこの辺りから~この辺りくらいまでがピントが合ってると言えるかな~?」といった感じです。(オートフォーカスは、方式はいろいろありますが、ピントが合っている位置をカメラ自身が判断しています。)
 このピントが合っていると言える範囲を、「被写界深度」と言います。

レンズによって、ピントが合う距離が違う。

 『ピントが合っている範囲』と言われても、抽象的でわかりにくいのですが、被写界深度は正確には、『「カメラから被写体までの距離のうち、ピントが合っていると言える距離がどこからどこまでですか?」と聞かれた時の答え』です。
 この距離は厳密に数式で表せますが、イメージとしては、
Digital camera tips3 20140725 01
 といった感じになります。
 カメラから被写体までの距離によってピントが合う合わないを観察していった時に、ピントが合っているとして許容出来る位置はどこ(どの範囲)ですか?ということです。
 これは、レンズによって変わりますし、その他の条件によっても変わります。もちろん限界もあります。
 どうしてもピントが合わない場合は、そのレンズの限界の距離を越えているかもしれない(近すぎる、遠すぎる)ので自分で近づいたり離れたりしてみてください。

 ただ、ピントが合っているという判断は最終的にはヒトが判断しますが、ここではもう少し厳密に定義したいと思います。
 ピントが合っている時、合っていない時のカメラの中をイメージしてみてください。
Digital camera tips3 20140725 02
 焦点(ピント)が合っているときは、被写体1点からの光が、映像が映る面(撮像面)で1点に集まります
 焦点がずれているときは、被写体1点からの光が、撮像面で1点に集まりません
 1点に集まらずどんな形になるかというと、円状に広がります。この円を『錯乱円(さくらんえん)』と呼びます。この錯乱円がどんどん小さくなって1点になる時、『ピントが合った』と言ってよいでしょう
 ですが、ホントに1点になることってあるかというと、なかなかそうは行きません。というより揚げ足を取ってしまうようですが、いくら点だと言ってもある大きさを持った円ですから。
 じゃあどこまで小さくなればピントが合ったと言えるか。『どこまで小さくなればOK?』という大きさを『許容錯乱円(きょようさくらんえん)』と言います。そのままの言葉ですね。

ピントを合わせるための手段

 ここまでくると、どうやればピントが合うのかなんとなくわかってくると思います。具体的には、

レンズのピントを調整する

 レンズの位置を調整し、撮像面にぴったり合うようにする。
Digital camera tips3 20140725 03
 これは普段やっているレンズのピント調整ですね。レンズによって光が1点に集中する部分を撮像面にぴったり合うようにしてあげます。

カメラ自体を動かす

 カメラ自体を動かして、ピントの合う距離範囲に合うようにする。
Digital camera tips3 20140725 04
 これもレンズだけをを動かすのと考え方は変わりません。ですがどんなカメラ・レンズでも使える方法なので確実です。そこまで移動できれば。の話ですが。

絞りを絞る

 実はもう一つ手段があります。
 絞りを絞ることでピントが合うことがあります。下のイメージをみると良く分かると思います。
Digital camera tips3 20140725 05
 冗談みたいな話ですが、実際にピントが合ったように見えます。
 絞りによって広がりすぎる光を制限し、擬似的に許容錯乱円内に収まる光だけを撮像面に取り込むという無理矢理な方法です。小さいレンズを使っているのと同じようなイメージですね。
 絞りでボケ具合を調整できる理由がコレです。(もちろん絞るので画像は暗くなります。)

 つまりピントをあわせるということは、どんな手段でもいいから、いかに1点の光の像を小さくするか(許容錯乱円内にいかに収めるか)。ということですね。

撮影条件と被写界深度の関係

 一般的な話として、絞りの値が小さく、撮影距離が近いと被写界深度が狭く(ピントが合いにくく)なります。また、レンズの焦点距離が短い長い方が(2014/9/8修正)、被写界深度は狭くなります
 (忘れがちですが絞りを開く方が絞りの値は小さいと定義されています。)
 ここまでの話をまとめると、

digital_camera_tips03_20140908new
 ということになります。(2014/9/8画像差替え:レンズの焦点距離と被写界深度の関係が逆に記載されていました。)

 どちらが良いと言う話ではありません。
 一般的にはピントの合っている画像の方がよいとされますが、うまく「ボケた」方が味のある写真になり、良い場合もあります。
 このあたりは好みや撮影シーンによりますね。撮影条件にもよります。暗くてどうしても絞れない時とかありますから。
 僕自身よくやりますが、マクロ撮影(小さいものの撮影)をするときは、この被写界深度を利用してうまくボケさせ、空間、サイズ感の表現に利用してやるとなかなかよい感じの写真になります。
 ポイントは、被写体に近づき、絞りを開けて撮影。です!

 このように、カメラで撮影するときにはピントが合う距離を意識してみて下さい。
 その時に意識しておくと便利なのが、カメラ(レンズ)の「最短撮影距離」です。
 これについてはまた次回に。

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